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 浜峰のひものトップページ > 一魚一会に感謝 > 2004年10月22日 熊野の毒
一魚一会に感謝
2004年10月22日
熊野の毒

リレーエッセーのトップバッターを引き受けた私は、四十代になるまで(いまの年齢は内緒)熊野に足を踏み入れたことはなかった。京阪神に住むものにとって、和歌山県の白浜まではなじみのある地名だ。温泉やサファリパークには世話になった。それから先は、広島生まれの私にとっては謎の土地だった。また逆周りで名古屋、松阪方面から南下するルートでも熊野に行けるのだが、伊勢神宮やスペイン村までが限界であり、そこから先は、未踏査の新世界であった。地理的にも気持ちのうえでも、熊野は遠かったのだ。
そんな私が熊野に年に数回通うようになってもう6年になる(あっ、いかん年齢がばれた)。理由は、学生を連れて地域の歴史や変化を勉強させてもらうフィールドとして熊野を選んだからである。この経緯やそれを可能にする偉大な人間力については、熊野実習総合プロデューサーのMさんが詳しく語ってくれるだろう。いまでは、京阪神はもとより関東、東海、四国からも教員や学生が参加する一大総合授業にまでなってしまった。
熊野の魅力は、ちょっとキザな表現をするなら、ヤマの生活とウミの生活が混在しときにぶつかりあう激しい活力にあるように思われる。それは、熊野地方を拠点にして創作活動をつづけた中上健二の作品のなかにも頻繁に現れるモチーフだろう。たとえば『火祭り』をイメージしていただくとよいかもしれない。

じつは私の主なフィールドは、日本ではなく、熊野よりもはるかに遠いアフリカ社会であり、二十代半ばに初めて訪問してから、のべにするともう五年近くをアフリカで暮らしてきたことになる。とりわけ私が住み着いている東アフリカの村は、赤道直下の山村であり、周囲は広大なサバンナと熱帯雨林に囲まれたところだ。そうした世界で暮らしなれていると、太平洋の荒波に直に接し、ぎりぎりまで深い山がせりだしてくるような熊野の世界は、まったくの異世界であり、それゆえに限りない魅力の源泉となる。熊野に来るたびに、熊野灘沿いにつづく小漁村と、熊野川上流部の山村を交互に訪れては、過疎化・高齢化の厳しい現実のなかで生き抜く知恵と技を、人生の大先輩から教えてもらうことは、何にも代え難い私の宝物になっている。

アフリカ好き人間には「アフリカの毒」という言い回しがある。それは、一度アフリカの大地と人々にふれあったものは、必ず、アフリカに戻っていくという意味である。この言葉を聞くたびに、私は「熊野の毒」について想像をふくらませてしまうのである。

松田素二(まつだもとじ) 京都大学文学部教授(アフリカ地域研究、地域社会学)
一魚一会ファンクラブ
リレーエッセー
2012年2月28日 還暦の記念冊子をいただきました。

第11回 2009年12月29日
出会いに感謝

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第10回 2009年10月31日
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第9回 2009年6月16日
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第8回 2008年9月30日
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松居和子(まつい かずこ)京都大学社会学研究室教務補佐


第7回 2008年6月30日
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大野 哲也(おおの てつや)
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第5回 2004年12月29日
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第4回 2004年6月2日
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第3回 2004年2月11日
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古川 彰(ふるかわ あきら)
関西学院大学社会学部教授:(アジア地域研究、環境社会学)

第1回 2004年10月22日
熊野の毒

松田素二(まつだもとじ)
京都大学文学部教授:(アフリカ地域研究、地域社会学)

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