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 浜峰のひものトップページ > 一魚一会に感謝 > 2007年05月08日 徐福伝説と冬の海
一魚一会に感謝
2004年12月29日
徐福伝説と冬の海

徐福神社徐福伝説に始まる渡来人伝説が、地域のいまに生きる姿を追っている「波田須に港なし」という言葉がある。熊野の波田須は海沿いの地区ではあるが、波が荒く、地域の人たちは巡航船に乗るのも、山道を港のある町まで歩いて行かなくてはならなかったという。それほどに海岸には強い波が打ち寄せ、岩を運んでは削り、丸みのある大きな岩ばかりがそこにある。冬の海は色濃く、一層深い。そんな海のことを思い浮かべていると、波田須に今も伝わる徐福漂着伝説が思い起こされる。

遥か2200年もの昔、中国は秦の時代、始皇帝は初めて国を統一し、何もかもを思い通りにした。そして最後に残された望みが、我が身の永遠の命であった。そこに徐福という人物が登場する。徐福は東海の三神山に不死の薬があると進言し、童男童女数千人と百工(技術者)を用意させ、五穀の種を積んで、船団を組んで渡海した。しかし、始皇帝のもとへ戻ることなく、徐福は平原広沢の王となったという。 波田須には、その後を語る伝説がある。ある冬の日、徐福は「船で来て遭難してな、船はあれして、その人ら助かってん人あんだら、そこへ浮き上った」。そして「荒らした田んぼの向こう側に、ちょっと三角みたいなそこへ上陸した」。当時、波田須の矢賀部落には藁葺き屋根の家が三軒しかなかった。徐福は助けた褒美にと、巻物・剣・すり鉢の宝物を授けたという。すり鉢は今も神社の宝物として大切に保管されているが、それだけでなく、波田須では今も自分たちは中国から渡って来たという言い伝えが生きており、「波田須顔」と表現する。

明治時代末期、国によって神社合祀が進められたとき、波田須の徐福を祀っていた徐福神社も、波田須神社に合祀されることになった。地域の人たちはそれを阻止するために、より大きな徐福神社を自分たちで建てたいと申請した。しかし合祀が決まり、祭神から徐福の名もはずされた。無理もない。時代は徐福を封じようとしていた。間もなくのことだ。波田須の青年団は、海岸に打ち寄せた大きな丸い岩を担ぎ上げ、坂道を登り、一度もその岩を降ろすことなく徐福神社の跡地に運び上げたという。そして石工を呼び、その岩に「徐福の墓」と刻ませた。これが精一杯の抵抗であったのだろう。

徐福神社熊野古道は、波田須に入ると民家の間を縫うように続く。家々の軒先では、徐福が捜し求めたと伝えられる天台烏薬という薬木が枝を広げている。静かなこの波田須の土地で、今も「徐福さま」と語り、守り続けてきた人たちがいる。波田須に伝わる徐福伝説は、地域の人々の営みの中で伝説がどのような意味をなしてきたのかを見せてくれる。

そろそろ波田須に出かけよう。海沿いの道で車を降り、細い道を降りていこう。波田須を歩き、冬の波の音を聞きながら、そして話を聞かせてもらおう。温かく迎えてくださる方たちの変わらぬ笑顔が浮かんできた。

逵 志保(つじ しほ)  愛知県立大学文学部非常勤講師
一魚一会ファンクラブ
リレーエッセー
2012年2月28日 還暦の記念冊子をいただきました。

第11回 2009年12月29日
出会いに感謝

寺口淳子(てらぐちじゅんこ)医療法人健康会京都南病院 看護部長

第10回 2009年10月31日
チューターのひとりごと

土屋雄一郎(つちや ゆういちろう)京都教育大学准教授

第9回 2009年6月16日
古くて新しい里

伊地知紀子(いぢちのりこ)愛媛大学法文学部 人文学科准教授


第8回 2008年9月30日
私と熊野〜後鳥羽上皇の熊野御幸をよみながら

松居和子(まつい かずこ)京都大学社会学研究室教務補佐


第7回 2008年6月30日
熊野古道の賑わいと味わい

寺口瑞生(てらぐちみずお)千里金蘭大学現代社会学部教授

第6回 2007年5月8日
四季を体験する方法

大野 哲也(おおの てつや)
京都大学大学院博士

第5回 2004年12月29日
徐福伝説と冬の海

逵 志保(つじ しほ)
愛知県立大学文学部非常勤講師

第4回 2004年6月2日
暮らしの力

田原範子(たはら のりこ)
四天王寺国際仏教大学・短期大学部助教授

第3回 2004年2月11日
このみの山ずま居

中村律子(なかむら りつこ)
法政大学現代福祉学部助教授(高齢福祉学)

第2回 2004年12月07日
何ぞ書にのみ学ばんや

古川 彰(ふるかわ あきら)
関西学院大学社会学部教授:(アジア地域研究、環境社会学)

第1回 2004年10月22日
熊野の毒

松田素二(まつだもとじ)
京都大学文学部教授:(アフリカ地域研究、地域社会学)

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